酩酊スピリチュアル風味。ロイド・マクニールの『アシャ』

ちょっとエコーがかかり気味のフルートと、バックのハッスル、ハッスルなリズムが微妙な懐かしさを呼び起こす『アシャ』。
黒人フルート奏者、ロイド・マクニールのファーストアルバムです。
録音は1969年。
なるほど、なんだか昔の映画やテレビをプレイバックしているかのように感じるのは、時代の空気が音にこびりついているからなのかな?
マッコイ、あるいはハロルド・メイバーンを甘口にしたようなジーン・ラッシュのピアノと、常に硬い低音を堅持するスティーヴ・ノヴォースのベース、パワフルなエリック・グラヴァットのドラム。
基本、肉厚モリモリなリズムセクションなんだけれども、グサグサエッジが立ったものではなく、抒情的な甘口メロディをパワフルに奏でるマクニールのフルートと、ある時は鼓舞し、ある時はやわらかく溶け合っています。
酩酊気分にクラりひょん。
ある意味、ドロシー・アシュビーや、アリス・コルトレーンの酩酊スピリチュアル(?)にも通じる心地よさがありますね。
▼収録曲
1. Asha
2. As a Matter of Fact
3. Two-Third’s Pleasure
4. Dig Where Dat’s at!
5. St. Margarets’s Church
6. Effervescene
7. Warmth of a Sunny Day
記:2020/02/19

ブレイキー生誕100年ベストの『アート・ブレイキー時代』

昨年末に「ブレイキー生誕100周年」ということで発売されたアート・ブレイキーの良いとこどりベスト。
⇒『アート・ブレイキー時代』
2枚組のCDです。
収録曲を一望すれば、多くのジャズ好きは「ほとんどの曲が、知ってる曲ばかりじゃん?」となると思います。
たしかにそう。
しかし、曲順が変わるだけで、かなり聞こえ方が変わってくるんですよね。
映画の世界でいうクレショフ効果ってほどでもないんですけど、普段聴き慣れている曲でも、前の曲が変わるだけで、かなり印象が変わる。
そこが面白く、また別な気分、視点で楽しめるし、その楽しみを提供してくれるのが、この2枚組CDなのです。
撰者はおなじみジャズプロデューサーの行方均氏。
《シン・マン》から始めるセンスが並大抵ではありませんね。
《モーニン》や《チュニジアの夜》もちゃんと収録されており、ブレイキー入門にも最適です。
記:2020/02/18

ブルーノート幻の1592番、ソニー・クラーク・クインテッツ

なんらかの事情で、番号のみでお蔵入りになっていた作品、ソニー・クラークの『ソニー・クラーク・クインテッツ』は、幻の1592番と呼ばれています。
前半は『クール・ストラッティン』のメンバー(アート・ファーマー、ジャッキー・マクリーン、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズ)で、『クール・ストラッティン』と同日録音のナンバーから。
後半は、ベースのチェンバースは『クール・ストラッティン』と同じですが、あとは、ギターにケニー・バレル、テナーがクリフ・ジョーダン、ドラムがピート・ラロッカという組み合わせによる演奏です。
ま、寄せ集めといえば寄せ集めなのかもしれませんが、それでも演奏クオリティはグー。
『クール・ストラッティン』好きには見逃せない内容であることには変わりありません。
後半のセッション、特に《マイナー・ミーティング》がおススメ。
記:2020/02/17

>>クール・ストラッティン/ソニー・クラーク

本好きにはたまらない!『クリフォード・ブラウン―天才トランペッターの生涯』

これまで、ジャズ本は結構読んできたと思うんですが、その中でも、内容もさることながら、本という「物体」としての愛着もあり、大切にしている本があります。
それが、音楽之友社の『クリフォード・ブラウン』(著:ニック・カタラーノ/訳:川嶋文丸)。
トランペッター、クリフォード・ブラウンの伝記ですね。
もちろんブラウニーの素晴らしい人柄の描写や、演奏の解説の充実度はさることながら、やっぱり本=ものとしての素晴らしさがこの本にはあるんです。 
まずは装丁が素晴らしいのです。
このカバーのデザインは、基本的にはオーシャンブルーとオレンジを基調とした配色なのですが、そこが、まずはおしゃれ。
カバーを外してもなかなかのデザインで、色合いも、手触りも言うことなし!
猛烈に読書欲を刺激してくれます。

そして表紙をめくると、鮮やかなオレンジ色。

オーシャングレーにオレンジが鮮やかに映えます。
そして、活字も字間(行と行の幅)がとても心地の良い適度なスペースで、可読性が高く、上下左右の余白のバランスも申し分なし。

凄まじく読書欲をプッシュしてくれます。
電子出版や、オーディオブックが台頭している今日、本は内容さえ頭の中に入ればそれで良いのだという方も多いとは思いますが、「モノ」としての本が好きな本フェチにとっては、この本はとても価値のある本なんじゃないかと思っております。
ますますブラウニーのことが好きになりますしね。

記:2020/02/16

倦怠感とは異なる気だるさ。マイルスの《レイジー・スーザン》

動画でも語っています。

平岡正明は、著書『日本ジャズ者伝説』で、「レイジー」と「アンニュイ」の違いをこう表現している。

「気だるさ(レイジー)」と「倦怠(アンニュイ)」はちがう。野獣のように強い筋力があるために、もの倦く感じるのが「レイジー」だ。

「倦怠(アンニュイ)」というフランス語が、上流階級の頽廃感を宿していることに比して、「レイジー」は、労働者階級の不服徒を感じさせる。


日本ジャズ者伝説

以前、これを読んだときに、「なるほど!」と合点がいった記憶がある。

そして、なおさらマイルスがブルーノートに残した《レイジー・スーザン》に愛着がわくようになった。

当時のマイルスのガールフレンドの名前からとったタイトルらしい。

うん、たしかにレイジーだ。

特に、マイルスのアドリブのフレーズの随所に「醒めた気だるさ」が感じられ、なんともレイジーな心地よさ。

そして、この演奏に流れる独特なムードは、決してダラリとした「アンニュイ」ではなく、まったりとしていつつも、芯は躍動的。

アート・ブレイキーやホレス・シルヴァーのバネのあるリズム感のなせる業だろう。

「野獣のように強い筋力」。

たしかにそうかもしれない。

デックスの『モンマルトル・コレクション』がいよいよ再発!

デクスター・ゴードンの2枚組ライブ盤、『モンマルトル・コレクション』が再発されます。
私も、これ大昔に買ったのですが、もうCDケースの透明プラスチックがガビガビ。
ついでにCDの鏡面もガビガビっぽいところがあるので、買いなおそうかどうしようか思案中。
なにしろ、このライブ、良いのですよ。
収録曲は下に記しておきますが、大スタンダードのオンパレード。
饒舌かつエレガントなケニー・ドリューのピアノの好サポートを得て、1曲ごとにボリュームたっぷり、お腹いっぱいの、太っ腹充実度を誇る演奏が繰り広げられます。
正直、このアルバムのCD2枚ぶんを一気に聴きとおすのは、なかなか大変ではあるのですが、その日の気分で、「今日は2枚目」とか「今日はバラード系中心で」というように、テーマを決めて数曲単位でじっくり聴いていけば、長らく楽しく付き合えるのではないかと思います。
なにしろデックス特有の崩しとか諧謔がはいっているにせよ、基本は曲の輪郭を大切にした吹奏なので、ジャズのスタンダードのメロディを追いかけたい初心者にも最適。
私もそうでしたが、初心者が「?」となることのひとつに、スタンダードナンバーの原曲のメロディがよくわからないということがあるじゃないですか?
⇒なぜなら、聴くアルバムによっては、ジャズマンがかなり崩しを入れて演奏しているから。
しかし、ここでのゴードンは、もちろんゴードン流の解釈はあるにせよ、基本は原曲のメロディを大切にしたテーマ処理が大半なのですね。
なので初心者にも優しいアプローチなのです。
ちなみに、名曲の《ミスティ》は、多くの歌手が歌ってきたナンバーではありますが、意外とサックス奏者が吹く《ミスティ》って聴いたことがないという人も少なくないのでは?
そういう方には、このアルバムのゴードン流、暖かくて悠々とした《ミスティ》をおすすめしたいですね。
とにかく、コクのある演奏が、ぎゅっと圧縮、凝縮された2枚組なのです。
disc1
1. ソニームーン・フォー・トゥ
2. フォー・オール・ウィ・ノウ
3. デヴィレット
4. ドキシー
5. ライク・サムサン・イン・ラヴ
6. ボディ・アンド・ソウル
disc2
1. 貴方なしでは
2. ブルース・ウォーク
3. 降っても晴れても
4. ミスティ
5. バット・ノット・フォー・ミー
6. A列車で行こう
記:2020/02/14