マイルスを「卵の殻の上を歩く男」と評した男

マイルス・デイヴィスの繊細なバラード表現に対して有名な形容として「卵の殻の上を歩く男」という言葉が有名だ。

これは、ブルーノートの1502番の『マイルス・デイヴィス(マイルス・デイヴィス・オールスターズ)vol.2』のライナーノーツで評論家のレナード・フェザーが記したことで有名になった。


マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.2

じつは、このフレーズを考えたのは、フェザーではなく、ジャズ評論家でピアニストもあったバリー・ウラノフによるもの。

彼は『スワーン』誌や『メトロノーム』誌のスタッフもしていたことがある。

フェザーは彼の言葉を引用し、ライナーに書き、有名になった。

ちなみに、このアルバムに収録されているバラードは、《アイ・ウェイテット・フォー・ユー》や《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》だ。

本当に素晴らしいバラード表現で、雄弁さとは真逆をいく、少し訥々とした表現は、マイルスにしか出せない境地だといえる。

ドラムとリーブマンの一騎打ちがカッコいい

デイヴ・リーブマンのアルバム『ルックアウト・ファーム』。
テナーサックスを吹きまくりのデイヴ・リーブマン。
ドラムでリーブマンをあおりまくるジャック・ディジョネット
⇒失礼しました、ジェフ・ウィリアムスでした。
テナーとドラムのデュオ、圧巻の約9分の冒頭。
まるでコルトレーンが晩年に録音した、ラシッド・アリとのデュオアルバム『インターステーラスペース』の洗練バージョンアップ版としても聴けますね。
とにかくシャープ。
一直線に前へ前へと進んでいく。
この2人の掛け合いは本当にスリリング。
いやぁ、こんなん聴かされた日は、一日中何も手がつきませんですわ。
強力!
リッチー・バイラークのエレピも攻撃的で吉。
今なら、おトク盤CDが比較的安めの値段で買えるかもしれません。
記:2020/02/12

ヴィブラフォンも演奏したアリス・コルトレーン

ジョン・コルトレーンと結婚する前のアリス・コルトレーン(アリス・マクロード)は、ピアニストとして様々なバンドのサイドマン(ウーマン)として活躍していました。
そのひとつにヴィブラフォン奏者 テリー・ギブスのバンドがありました。
このバンドのライヴの目玉に《トゥー・ヴァイブス》というナンバーがあり、2台のヴィブラフォンの掛け合いでショーを盛り上げるというものがありました。
この曲を演奏する際は、ピアニストがヴィブラフォンを弾く(叩く)わけですが、アリスは、他のピアニストよりも上手にヴィブラフォンの演奏ができたようで、重宝されたようです。
1963年の夏、「バードランド」にこのバンドが出演していた時、コルトレーンのバンドも対バンで出演していました。
アリスの素晴らしいヴィブラフォンの演奏に感心したコルトレーンは休憩時間に「君がヴィブラフォンが出来るとは思わなかった」と彼女に話しかけます。
2人はすでに、何度かパーティなどで会っており挨拶を交わす程度の面識はあり、互いになんとなんとなく気になる存在だったようです。
アリスは、「あなたは私のことを知らなすぎなのよ」と返したところ、コルトレーンは「わかった、これからは君のことを何でも知ってる人間になるよ」と言ったそうです。
3年後、コルトレーンはネイマ(ナイーマ)と離婚し、アリスとメキシコのフォーレスで結婚式を挙げました。
ちなみに、コルトレーンと結婚する前のアリスも既婚者で、娘もいました(名前はミシェル)。
コルトレーンとアリスはバツイチ同士の再婚だったわけです。
アリス・コルトレーンはピアノのほか、ハープ(琴)を弾くことは有名ですが、ヴィブラフォン(鉄琴)を弾けたということはあまり知られていません。
日本語でいう「琴」がつく楽器が得意だったというのも面白いですね。
記:2020/02/11

日系二世ドラマー、ポール・トガワのリーダー作

まるで昭和の歌謡曲のドーナツ盤?
最初にジャケットを見た瞬間そう思ってしまったものですが、このアルバムはれっきとしたアメリカ人のジャズドラマーのリーダー作。
日系二世のドラマー、ポール戸川のリーダー作です。
現地(アメリカ西海岸)の人たちが抱くであろう「日系」というイメージに寄り添っているのか、1曲目の出だしや曲調などは、なんとなくオリエンタルな感じではありますが、その他のナンバーは、ごくごく普通の4ビートジャズです。
堅実だけど、柔軟性をも兼ね備えたブラッシュワークが印象的ではありますが、ド派手なプレイはありませぬ。
ジャズ批評別冊の『ジャズ・ウェストコースト』のレビューで、三星貴幸氏は「サラリーマンのようなドラム」と書かれているけれども、いやはや手厳しい。
ま、いちおうは彼がリーダーのアルバムではあるけれども、たしかにリーダーとしての自己主張的なことは、ローレンス・マラブルのアルバムなみに少ないかもしれませんね。
むしろ、パーカーを、いや、ソニー・クリスを彷彿とさせるガブ・バルタザールのアルトサックスのプレイがどの曲も際立っていますね。
なかなか滑らかさとキレの良さのバランスが心地よいサックスです。
《イッツ・オールライト・ウィズ・ミー》や《ラヴ・フォー・セール》などの有名スタンダードの演奏がグー。
ブラシの奥でボリッと刻まれるベン・タッカーのベースも心地よし。
好奇心旺盛な方、どうぞ!
期待しないで聴けば、期待を上回る!
……って、当たり前か。
記:2020/02/09

やっぱりエレベの《ドナ・リー》はジャコでしょ!

先日、ジャコ・パストリアスの《ドナ・リー》に関して語った動画をアップしました。

やっぱりジャコの《ドナ・リー》は最高ですね!
彼は、生涯数え切れないほどライブでもこの曲を演奏しましたが、やはり数ある音源の中で、私がもっとも衝撃を受け、かつ彼の演奏の中で(あくまで聴いた範囲ですが)最良の演奏だと考えているのは、やはりファーストアルバムの『ジャコ・パストリアスの肖像』の1曲めのバージョンです。
音の粒立ち、ダイナミクス、アーティキュレーション……、全てが最高です。
音が立っている。

まさにこの表現がピタリと当てはまる演奏だと思っています。
この音の粒立ちの大きな理由は、もちろん、ジャコが使用していたフェンダージャズベースの性能の良さもあるのでしょうが、レスポンスの素晴らしい楽器を使いこなすジャコの技量があるからこそです。
ジャコ以外のエレクトリックベース奏者が演奏した《ドナ・リー》もたくさん聴いてきましたが、「音楽性の高さ」と言う意味においては、やはりジャコのこのバージョンが最高だと思っています。
他のベース奏者は、もちろん後出しジャンケンなので技術的にはジャコを上回る演奏もあるのですが、音楽性と言う面においてはやはり、『ジャコ・パストリアスの肖像』のヴァージョンこそが個人的には最高だと思っています。
皆さんはどう感じますか?
記:2020/02/08

レビューはこちらです⇒ジャコ・パストリアスの肖像/ジャコ・パストリアス

進化成長止まらない!松本茜の『オー・レディー・ビー・グッド』

昨年末に発売されたピアニスト・松本茜さんの新作『オー・レディ・ビー・グッド』。
新しいアルバムが発表されるたびに、表現のダイナミズムの振幅が広くなっていく感じがし、少しずつ着実に進化していく感じがします。
とくに、ここ最近ではスピード感がシャープに研ぎ澄まされていく感じがしてグー。
たとえば冒頭のガーシュウィン作曲の《オー・レディー・ビー・グッド》では、テンポチェンジをした瞬間に滑り出すピアノの優美なスピード感なんか、かっちょいいですし、アルバムの目玉曲のひとつ《バイ・バイ・ブラックバード》では、前半、後半のテーマともに、ドラムとの抜群のコンビネーションでユニークなメロディの造型処理をしています。
しかも、ギミックくささを感じさせないところが良いですね。
Aメロがペダルアプローチかつ和声がほんのりマッコイテイストなのは、まあお約束というか典型的なアプローチなのかもしれませんが、アドリブの滑り出しと展開が、やはりデビュー当時の演奏と比べると格段に成長している感じがします(もちろん、デビューアルバムの『フィニアスに恋して』も素晴らしい演奏ですが)。
個人的にはダメロンの《タッズ・ディライト》や、《バークリースクエアのナイチンゲール》がお勧めナンバーです。
もちろん原曲が好きだということもありますが、その原曲の歌わせ方が良いのですよ。
▼収録曲
1.Oh, Lady Be Good (G.Gershwin)
2.I love you (C.Porter)
3.Contact (A.Matsumoto)
4.Pleiades (A.Matsumoto)
5.Tadd’s Delight (T.Dameron)
6.A Queen Of The Night (A.Matsumoto)
7.Bye Bye Blackbird (R.Henderson)
8.A Nightingale Sang In Berkeley Square (M.Sherwin)
記:2020/02/06

>>ピアニスト松本茜さんのピアノのタッチ